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【Report】3/20「ふくしまの記憶と祈り」~空と大地の物語~

3月20日(日)は、澄み切った青空に恵まれ、会場からは安達太良山を見ることが出来ました。ギターの豊かな音色に魅了された「ふくしまの記憶と祈り」のレポートをお届けします。

17日(木)には、ギター渡辺隆先生とギタリスタスあだたらのみなさんは、福島中央テレビ「ゴジテレchu!!」にイベント紹介で出演しました。渡辺先生の堂々とした話しっぷりと学生チャンピョンの森湧平さんと渡邊華さんの息の合ったギター生演奏は、お茶の間に笑顔を届けてくれました。

◆「ふくしまの記憶と祈り」~大地と空の物語~

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会場設営には、渡辺先生のギター教室のみなさんが朝からお手伝いをしてくれました。ステージ背景は、タイトル「大地と空」のイメージから、福島を記憶する土の色と藍色をあしらいました。「壁面との境界をあえて曖昧にする。全てが融合していく感じに」と当会ロゴマークを作成した菊地めぐみさん(美術教諭)からアドバイスを受けながら、舞台イメージを広げていきました。生花は、追悼と未来への希望を色で表現。

いよいよ開場です。

◆第一部 14:00開始


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代表・田母神顯二郎からの開演挨拶
東日本大震災から5年を経て、震災で亡くなられた方へ哀悼の意を捧げ、復興の第一歩となるような未来を感じる会にしたいという思いを語る。
「(福島の)記憶や祈り」は、山々や川にも宿っていると思い、サブタイトルに「大地と空」と付けました。開催にあたりギターの歴史を調べていくと、スペインや南アメリカへ繋がり、その大地や空は、福島の地と空とも交錯するように思えてきました。ギターは民衆の音楽。偉大な作曲家たちは、普遍的な感動する曲を生み出していて、今日の演奏曲にもこうしたものが入っています」
カタロニア出身の名チェロ奏者、カザルスの言葉も紹介。
「音楽は全ての人が理解することが出来る話し言葉だ」
亡命者だったカザルスが、想いを託した音楽。
「ギターの音色を聴きながら、福島は世界のいろんなところとつながっていることを感じてもらえれば」と今回のコンサートに込めた思いを語った。

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本日の出演者、渡辺隆先生とギタリスタスあだたらのみなさん(左から、森湧平さん、渡邊華さん、山岡祐子さん、小林政貴さん)
「この演奏会の依頼を受け最初は戸惑いもあった。しかし、「エディットふくしま」を読み僕らが考えていることと共通していると思った。今日、この舞台で演奏することが出来て感謝している。演奏曲は、前半は、個人のソロ。後半は、歌のコーナーを入れて、復興を願う音楽を入れ、最後に未来へ。これからの未来を考えていきたい。」と渡辺先生。

◆ギター演奏
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「生かされていることに感謝して、精一杯演奏します」と小林政貴さん。
メキシコ出身のポンセが初期に作曲した「前奏曲」とスペイン全盛バロック音楽の主要な一人サンス作曲で、ウルグアイのカルレバーロが編曲した「スペインの古代舞曲集」から4曲を演奏。
繊細でありながら、異郷の地の情景を描きだしてくれるギターの音色が響きます。

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「これからのふくしまを思いながら、心を込めて演奏させてもらいます」と山岡祐子さん。
1曲目は、18世紀のスペイン、ギターの巨匠ソル作曲「練習曲」、2曲目は、アルゼンチンのメルリン作曲で「想い出」から3曲(アルゼンチンのサンバやベネズエラのダンス音楽など)を豊かな情感で演奏します。思いを一手に引き受ける包容力もありました。

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GLC学生ギターコンクール高校生の部で2年連続優勝の渡邊華さん。
「3月に高校卒業したばかりで、4月から東京の大学へ進学します。郡山での演奏の区切りにもなった今回の演奏会。今まで応援して下さった方々、来場の皆様に感謝して演奏したい」と話します。
演奏曲は、中南米の影響を受けたパラグアイのバリオス作曲「大聖堂」、続いて、ソルの晩年の傑作「幻想曲」、「重層的な音楽でパワフルでもあり、変わる音楽を楽しんで欲しい」抑揚のある重層的な音を奏でた華さんには、演奏技術と卓越した表現力が兼ね備えていることが伝わってくる演奏でした。

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2015年GLC学生ギターコンクール大学生の部優勝した森湧平さん。今年医学部を卒業し、医師国家試験に合格。4月から県内の病院で働くことが決まっています。
「震災から5年が経ち、震災復興支援の活動に少しでも役立つことが出来てうれしく、精一杯演奏します。」
1曲目は、ポールマッカートニー作曲、今年没後20年になる武満徹が編曲した「イエスタディ」、2曲目はブラジルのギタリスト ヴィラ・ロボスが作曲した「前奏曲」を演奏。しっとり聴き入る「イエスタディ」、がらりと変わり、クラシックギターの音楽とブラジル音楽が融合した「前奏曲」の組み合わせが、森さんが持つ純粋な繊細さと情熱の魂が交じり合って、素晴らしい演奏となりました。

◆第二部
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鈴木より「ふくしまの記憶と祈り」と題して、震災後、山や川といったふくしまの自然を巡ってきて豊かな大地と共に生きている人々について語りました。「震災後、言葉が入ってこなかった。その時、対話できたのは福島の山々、樹木、自然のものたちだった。言葉でなくとも交わすことが出来る、そんな力が福島の地にも音楽にもあるのだと思う」「福島の人々も、前へ一歩を踏み出している方も多い。多くの方々の思いをこれからも紡いでいきたい」
ふくしまの映像は、川内村と被災地、ふくしまの移ろい、ミノリとイノリに分けた映像をご覧いただきました。

○ 歌のコーナー
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「ふるさと」と「花は咲く」をギタリスタスあだたらのみなさんが演奏します。

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指揮は、渡辺隆先生。震災当時と思い出す方、未だ帰れない故郷を思い出す方、様々な思いは声に宿り、ギターの音色と織り交ぜられて、会場を包んでいきます。

○第二部の演奏は、祈りを込めた曲を演奏くださいました。
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渡邊華さんは「アメージング・グレース」をしっとりと弾きあげます。それぞれに去来するものを感じながら、華さんの表現力の豊かさに感じ入ります。

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小林政貴さんはレーモン作曲の「KIZUNA~絆~」を演奏。レーモンが東日本大震災へのレクイエムとして亡くなられた友人のギタリスト稲垣稔氏と私たち日本人へ友情の証として送られた曲です。誠実な真摯な音色に胸が打たれます。

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渡辺隆先生と山岡祐子さんの演奏で、ドビュッシー作曲の「月の光」です。
渡辺先生から「印象派で、輪郭がはっきりしないのですが、色彩感が素晴らしい。色彩感をギターで弾くとどうなるか、聴いて下さい。」と話がありました。色のあわい、時間の間を紡ぐような繊細であり、深さもある演奏で素晴らしい音色でした。

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渡辺隆先生が演奏されるのは貴重な機会だそうです。渡辺先生が演奏するのを楽しみに、駆けつけた方もいます。

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全員で未来への演奏です。
渡辺先生から、「これまでを考えることも大切ですが、これからのこと、未来へ歩み出せるようにと思い、演奏します。」
来場者で、ギターの音色に、癒され、涙が溢れて来たという方が多くいらっしゃいました。重層的であり、未来へ弾む感じもあり、会場が一体になったギター演奏の時間でした。

最後に田母神から「繊細で豊かで細やかで喜びに満ちた時間、あっという間に過ぎた時間」。いろいろな意味で、復興は時間がかかるかもしれませんが、もう一方、新しい歩みが大きくなっていくと信じている。」とこれからのふくしまへの祈りのメッセージが添えられました。

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イシス編集学校有志による福島への言葉の贈り物「献歌」もプログラムと一緒にふくしまの人々へ。

◆ 当日の感想 ◆

・素晴らしい会でした。
 このような機会を続けていることは本当に素晴らしいと思います。
 これからもどうぞ続けて下さい。   (福島市 女性)

・とてもあたたかい内容で良かったです。
 いつかお手伝いが出来たらと思います。(郡山市久留米 女性)

・ギターの音楽の世界に新しい知識の一部を得られました。(郡山市片平 男性)

・ギターがこんなに豊かなことに改めて驚きました。
 なぜか涙が出て来ます。(福島市 女性)

・今、福島の阿武隈山系の山は放射能が高くて登れない山がたくさんあります。鈴木さんが「山の土の1センチは100年の歴史」500年の歴史を失ってしまった郷土、そして私の家の庭の土も含めて、改めてこの5年の震災に原発への憎しみが増してきます。
でも、ギターの語り掛けるような音色にささくれた心が癒されました。そして、若者たちの澄んだギターの音色に、希望と力強さを感じ、涙があふれました。素敵な会でした。
ありがとうございました。写真素敵でしたよ!(郡山市 女性)

・とてもいやされました。
 音楽はいいですね。ありがとうございました。(石川町 男性)


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出演者と運営をお手伝い下さったスタッフのみなさん。

演奏後の懇親会で、渡辺先生は「震災後の1,2年は誰もが気張って何かしなければという思いが焦り、3,4年目になると疲れが出て空虚の気持ちになり、5年になると振り返ることもしなくなる。僕たち福島の人は、1,2年は県外からボランティアの人も多く入っていたので、普段通りに暮らそうと思い、いつか自分たちの力が必要とされる時のために力を蓄えておこうと思った。5年目の今回がその時だった」と話してくれました。
来場した誰もが、ギターの音色に癒され、音楽の対話力に感じ入り、何より、演奏される渡辺隆先生とギタリスタスあだたらのみなさんの人柄に触れることが出来た時間でした。渡辺先生は、「ギターは、演奏技術より、その人の生き様を感じ、感動する音楽です」と話されたましたが、まさにこれを体感した時間でした。

出演された渡辺隆先生とギタリスタスあだたらのみなさん、ご参加いただいた皆様、会の運営をお手伝いいただいた皆様、ご支援いただいたみなさまに感謝申し上げます。
(当レポートの写真は、山岡哲さんからご提供いただきました。有難うございました)

レポート 鈴木康代

【開催報告】11/23「ふくしま、ひとしずくの物語」福島公演

11月23日(日)、郡山も気持ちいい青空に恵まれたこの日、郡山駅前ビックアイ、市民交流プラザにて「ふくしま、ひとしずくの物語」福島公演を開催しました。

郡山駅前にあるビックアイは、地上24階、福島県内で最も高いビルです。23階には、最も地上から高いところにあるプラネタリウムがあり、ギネスに認定されています。このビルは、福島の先人による安積開拓のフロンティアスピリットを受け継いで建設されました。


開催にあたり、郡山市と郡山市教育委員会から後援をいただき、郡山市立美術館、市立図書館、文学の森や仮設住宅などにもチラシを案内。地元の福島民報社、福島民友社でも開催案内が掲載され、郡山市のFMココラジでは、ご厚意により、イベント案内で出演いたしました。FMラジオでは、タイトルにもなった「ふくしま、ひとしずくの物語」から「一滴が岩をも穿つ」という言葉の通り、何かが変わるその「ひとしずく」になれるようにと話し、東京公演でいただいた「ふくしまのみなさんへの励ましのメッセージ」を紹介いたしました。
みなさまのご厚意に感謝申し上げます。

開催前から、「ぜひ行きたい」「席空いてますか?」と問合せをいただきました。
その電話口から聞こえる福島の言葉は、とてもあたたかく、楽しみにしている様子が伝わっていました。

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開催当日、参加者が、普段から離れてゆっくり出来る空間にしたい、という運営スタッフの思いから会場を設え、レイアウトをしていきます。この日の花は、「再生へ祈りを込めて」という願いから、「鎮魂と再生」をテーマに地元花屋さんに見立てていただきました。

本1
東京公演でご協力いただいた松岡正剛著書『3.11を読む』などの本やイシス編集学校の冊子も並びます。
福島のみなさんも朝からお手伝いいただき、少しでもゆったりとした時間を過ごしていただこうとお茶やお菓子も用意しました。各地の御土産のお菓子も並びました。


◆ 13:30 開場

「楽しみにしていました」と、チラシを持って開場前からたくさんの方がいらしていただきました。
受付では、当初、用意していたプログラムが足りなくなるほどでした。
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当日は、6歳から102歳の方まで、福島市、郡山市、二本松市など福島県内各地から参加されました。大熊町、双葉町、富岡町、浪江町から現在も避難生活を続けている方いらっしゃいました。

◆ 14:00 開演

<代表・田母神顯二郎 挨拶>
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 「ふくしまに恩返しがしたい」。何度も福島へ通い続け、仮設住宅訪問などを通して、福島の人の温かさを感じ、さらに福島のことを考えていかなければならない、という思いが語られました。

続いて、当会の仮設訪問やチャリティコンサート活動などの映像も紹介しました。すると、「あの仮設住宅に住んでいます」「私のところにも来てくださいましたね」と声かけいただき、ここで再会することも出来ました。

<第一部 音楽コンサート ~ふくしまへ響く音楽~ >

バイオリニスト山本智美さん、口笛奏者・柴田晶子さん、ピアニスト松田光弘さんによるコンサートです。 
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福島県出身で埼玉在中の山本さん、縁があって郡山市に3年前から住んでいる柴田さん、埼玉からいらした松田さん。県外でも活躍されていますが、福島県内の仮設住宅でも演奏訪問活動をされています。
どの曲も情感に溢れ、普段我慢していたことを解き放ってくれる、そんな力がありました。
「はなみずき」の演奏が始まると、今は、原発事故の影響で立ち入ることが出来なくなった双葉町の自宅にあった“はなみずき”を思い出し、いろんな感情が込み上がってきて涙する方もいらっしゃいました。
「聴くことができて良かった」と話してました。

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口笛国際コンクールで2度優勝している口笛奏者・柴田晶子さんの口笛の音色は、時間や物理的距離を越えて私たちの心の奥深くに響き渡ります。
幼い頃の記憶が蘇ったり、遠く離れた故郷の風景が浮かんだり、記憶を手繰り寄せることが出来る音色です。
ピアニスト松田さんとも息が合った演奏で、「見上げてごらん夜の星を」でしっとり演奏したり、「A列車で行こう」でテンポよく演奏されました。会場では、思わずほろりと泣いたり、笑顔になったり、元気をいただける演奏でした。

笑顔
参加された方の表情も、いきいきと輝いていました。


<第二部 ~ふくしまのほんとうの空~>

<ふくしまへのメッセージ紹介 「智恵子抄」の朗読>
朗読2
代表・田母神から「智恵子抄」の「ほんとうの空」とは、誰にとってもかけがえのない心の故郷につながると思う。東京公演では、「ふくしまのことは決して他人事ではないんだ、かけがえのない故郷を何かしなくてはならない、という思いが共有された」ことも伝えられました。また、安達太良山に夕日が沈む美しい様子から、山上他界という先達の面影を感じる地でもあることが語られました。
「智恵子抄」の朗読は、「阿多多羅山あたたらやまの山の上に毎日出てゐる青い空が智恵子のほんとの空だといふ。」で有名な「あどけない話」から始まりました。この「ほんとうの空」は、何なのか、どうしたらもう一度「ほんとうの空」を見えるのか、私たちは考えていきたいと思います。
続いて、智恵子が実家で静養していた時に、訪れた光太郎と散策していた時に作られた「樹下の二人」です。そして、最後は、智恵子を亡くした後に作られ「人を信じることは人を救う」から始まる「あの頃」です。

メッセージ紹介と朗読は、当会メンバーで司会の森井一徳、米山拓矢からお届けしました。柔らかく優しい語り口に参加された方も熱心に耳に傾けてくださいました。

当日参加された方には、「ふくしまへおくる言葉」をお渡しし、「福島のことを考えてくれている人がいる」「忘れ去られていない」という声もいただきました。

<音楽コンサート~再生へ祈りを込めて~>

柴田さん会場
ピアニスト松田さんが会場のリクエストに応えます。会場からは「イマジン」「愛燦燦」「小さな恋のメロディ」など次々と声が上がり、松田さんは、即興ピアノで、会場の人々の願いと祈りをピアノの音色に奏でて演奏されました。その音は、繊細な感情を掬い上げる響きでした。

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そして、バイオリン山本さん、口笛柴田さん、ピアノ柴田さんで、東日本大震災の後、故郷や家族を失った方々、大切な土地を失った方々、避難生活や制限された生活が続く中で、福島、東北のみなさんの励ましになった「花は咲く」も演奏されました。手を合わせて聴く方、両手で目頭を押さえる方もいらして、優しい切なさに満ち溢れ、思いが交差する空間になっていきました。

参加者の様子1
お一人お一人が、いろんな思いを持って音楽を聴いてくださいました。

演奏終了時には、なりやまない拍手が会場に響き渡りました。
最後に、代表・田母神とメンバーでお見送りをしていると、「とても感動しました。」「思いがけなく素晴らしい会に参加できました」「次もぜひ期待しています」と言葉をいただきました。

こうして、福島の皆さんと一時を共有できたことは、私たちにとっても心あたたまる時間であり、「ほんとうの空」をとは何か、感じられた時間でもありました。

参加いただいた方からメッセ―ジもいただきました。

・来年も願う。来福。

                 会津若松市 男性 (避難前 大熊町)

・大変感動しました。本当にありがとうございました。

                               郡山市 男性

・何もかも大満足です。本当です。
 皆様の笑顔がとても良かったです。
 充実した内容でありがとうございました。 
 又、お願いいたします。

                               郡山市 女性

・以前聞いた柴田さんの口笛が聞けるということで参加させていただきました。
 期待通りとても素晴らしいコンサートで心があたたかくなりました。
 企画された皆様ありがとうございました。
 次の機会も楽しみにしています。
                               郡山市 女性

・郡山に住むようになって4か月。実は、私も原発事故により、双葉町から避難をし、
 生まれ故郷の山形、鶴岡市に3年半お世話になり、終の住居をここの地に決め、
 引っ越してきました。
 音楽も好きだし、詩も大好きで、本当に来てよかったと思いました。
 双葉の家に植えた“はなみずき”も誰も見る人がいなく。
 演奏を聴いて、悲しいやら、悔しいやら、ジーンとしてしまいました。
 松岡正剛さんのことはテレビで拝見して魅力的な方だと思ってましたが、ここで又、
 知ることが出来てうれしかったです。
 久しぶりに、至福の時間を頂きありがとうございました。
 これからも益々のご活躍を祈っております。

                        現在 郡山市 女性 (避難前 双葉町)

・3.11 東日本大震災と福島原発事故で被災し3年9カ月、富岡町夜の森の期間困難区域
 から郡山市内の仮設住宅に住んでいます。
 震災復興は名ばかりで何一つ進んでいない現状です。2020年東京オリンピック招致決定
 で人・物・金がすべて中央に吸い上げられ、災害公営住宅建設も大幅に遅れています。
 美しい、いわき七浜もまだ目で見ることは出来ないし、夜の森公園の桜も悲しんでいます。
 しかし、一歩一歩、人々は明日を信じ確実に前進もしています。
 今日の素晴らしい演奏会はもちろんですが、多くの皆様に支えられて生きている日々を大切
 にして前を見て歩いて行こうと思っています。
 
                    現在 郡山市 男性  (避難前 富岡町字夜の森)

この他、たくさんの言葉をいただきました。

当日は、福島民報、福島民友の取材もありました。
福島民報は翌日の全県版に掲載されました。ありがとうございました。
<福島民報のWebの記事はこちらです>

福島のみなさんの表情を拝見し、声を聴いて、今、福島が抱えていることは、とても大きく、先が見えないことかもしれないと思いましたが、これからも福島に向き合い続けていきたいと切に思いました。

ご協力、ご支援いただきましたみなさま、ご参加いただいたみなさま、
本当にありがとうございました。

心より感謝申し上げます。



レポート 鈴木康代

【開催報告】10/19「ふくしま、ひとしずくの物語」-再生へ祈りを込めて-

10月19日(日)、秋晴れに恵まれた東京、豪徳寺。当会にとっては第2回の東京公演。
今年は、編集工学研究所、松岡正剛校長のご協力のもと「ゴートクジISIS館 本楼」で、
「ふくしま、ひとしずくの物語 -再生へ祈りを込めて」を開催しました。

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「ゴートクジISIS」には、6万冊にわたる蔵書があり、「本楼」は、高さ4メートルの書棚に2万冊の書籍を集めたスペース。本棚には福島の写真パネル、中央におかれたブビンガのテーブルには、3.11に関連する本やメンバー推薦の本が並びます。

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「イノリとミノリ」というテーマで、花のしつらえを担ってくださったのは斎藤智子さん。

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「ゴートクジISIS館」の扉を開くと、本の茶室空間「井寸房」があります。タイトルにもなった
松岡校長の「滴」の記事が来場者を出迎えます。

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開演前、松岡校長から、言葉にしてこなかったものを伝えるという問いがある、という言葉をいただきます。


◆13:30 受付開始

「3.11を考えたい、何が出来るか一緒に考える時間をとりたい」と、当日は、朝から
開演直前までメール、電話での申し込みが入りました。

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受付には、今日のお手伝いのスタッフ。ふくしまの案内とプログラムを手渡していきます。


◆14:00 「ふくしま、ひとしずくの物語」開演

【オープニング映像 「フクシマからふくしまへ」】

ふくしま再生プロジェクトの1年の活動記録からスタート。津波被災地、旧警戒区域、仮設住宅訪問、浪江町、大熊町、富岡町の仮設住宅でのチャリティコンサートの写真映像で、プロジェクトの1年の歩みを振り返ります。この映像にある、富岡町の方の「富岡に帰りたいです。家に住みたいです」というメッセージ。この切実なしずくをどう受け止めていくか、プロジェクトの問いです。

【開会の挨拶とふくしまの今】

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鈴木より、今まだ町や人々の分断が続き、避難生活を余儀なくされる12万人がいる福島の現状を伝えます。「フクシマ」や「3.11」と記号化されることでこぼれ落ちる福島の思い、避難している人は、かつての故郷が彼方の向こうになってしまった切実なしずくについて話しました。



【代表 田母神顯二郎あいさつ】

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代表 田母神顯二郎からの挨拶。福島は、切実で、深刻な「しずく」に満ち溢れている。悲しみの滴、怒りの滴、諦めや絶望の滴・・・、こうした言葉にならないしずくを受け止め、少しでもよい方向へ流れを変えたいと走り続けてきたメンバーの思いを話す。そして源流というもう一つの大事なしずくにたどり着き、今日はそれを届けていきたいと、語った。


【松岡校長メッセージ】

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私たちの中には、平時と有事が入れ子状態になっている。福島にもたらされたのは、未曽有のものだが、この有事は一人一人の内にあるもの。これが、突然一緒にやってくると解決不能になってしまう。それが福島に起きてしまった。

一滴のしずくは、どこかに必要なものとなる。
日本には、たくさんの小さなものが集まって、全体を組み立てているものがある。
「一滴のしずくが岩をも穿つ」、古今東西で続いている、大事な見方で、素晴らしいもの。
このプロジェクトは、「しずく」をいろんなものにしていって欲しい。と語りかけてくれた。


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松岡校長の言葉のしずくに、本楼は包まれていきます。

【 ふくしまへおくる言葉 インタースコア】

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司会の森井一徳から、「ふくしま」を我々は彼方と考えていない。自分たちの中にも、忘れてしまったこと、失ってしまったものがあり、誰もが「福島」を持っていると思う。喪失と再生は繋がっているもので、ふくしまを編集のきっかけにして、私たちも再編集へ向かっていける、と活動を通して感じたことが語られた。
また、「ふくしまへおくる言葉」について説明。今日のひとしずくの物語を体験することで、よりリアルに、より微細に、この場で出会ったふくしまと関係性を見つけて、ここから福島へおくる言葉をつむぎたい。東京と福島を結ぶ方法を説明した。

◆14:40  第一部 「ふくしまに歌う」

【口笛とピアノの協奏】

今年7月、浪江町仮設住宅チャリティコンサートで演奏したくださった口笛奏者 柴田晶子さん、ピアニスト 松田光弘さんをゲストに招き、異郷へ誘う口笛の演奏を披露。本楼の空間に風が吹きます。

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国際口笛コンクールに2回優勝。プロの口笛奏者として日本でも数少ない存在の柴田さん。能舞台、寺院、森の中など、様々なステージにも立ち演奏活動を続けています。この日は、本楼がステージ。震災関連や福島に関する本に囲まれて、遠く福島を思い演奏。柴田さん自身も、震災後、福島県郡山市に住んでいます。福島に住んで大丈夫だろうか、自分で情報を集めて、大丈夫と思って福島に来たそうです。

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ピアニストの松田さんは、その場の思いを指先にのせ、繊細な音色を奏でます。再現する音楽ではなく、人の感情を掬い取ることができる方です。この日は、柴田さんのために作曲した「ココロノシズク」「つむぎ風」「水中花」も演奏。福島の哀切を引き受けて演奏した柴田さんと松田さんの思いは、月灯りの幻想的な空間の本楼に響き渡り、心に染み入るものでした。

【『智恵子抄』と『万葉集』の朗読】

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劇団百景社所属の俳優 鬼頭愛さんによる『智恵子抄』より「あどけない話」「樹下の二人」「山」の朗読。抑揚がありながら、行間を託す声に聴き惚れながら、遠く安達太良山、磐梯山を忍びます。

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解説を担うのは米山拓矢です。二本松は、高村智恵子のふるさと。高村智恵子は、詩人で彫刻家の高村光太郎の奥さんで、『智恵子抄』の智恵子その人です。ふくしまの名峰・安達太良山は、かつては濁音を入れずに「アタタラヤマ」と呼ばれた。頂上がぽちっと盛り上がっていることから、乳首山とも呼ばれる。アタタはアイヌ語で「乳」という意味。 まさに「母なる山」といえると語られた。

さらに、山について、松岡校長の『花鳥風月の科学』の「第1章 山」の中から一部を紹介。

  |・稲作水田文化がさかえる前は、山はまさに日本の原郷だったのです。
  |・日本にも古くから「山中他界」という観念がありました。
  | 人々は死ぬと魂や山の彼方に飛んでいき、そこで往生をとげるという考え方です。
  |・山はさまざまなイメージの母型なのです。
  |(松岡正剛『花鳥風月の科学』「第一章 山」)

山とは何か、ここにどんな意味があるのか、考える時間にもなっていった。


◆15:40 第二部 「ふくしまの姿見」

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8月に2日間で550キロの福島を撮影した青森出身の岡村豊彦から、「青森は東北と言っても震災の被害が少なかった。それが宮城福島の人たちへの申し訳なさがあり、ずっともやもやしていた。実際に福島を見てみよう」と、撮影のきっかけが語られた。

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「福島の旧警戒区域を訪れ、3年経って日々復興と言われることもなくなり、福島は落ち着いているのかと思っていたら、津波の後もそのままで、誰も住んでいない。一方、2日目の福島撮影は、奥会津の水の清らかさ、生命力を感じるものだった」と語った。

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映像に見入り、福島の今の現状に耳を傾ける参加された方々。


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鈴木からは、今年5月、自宅も除染し、その除染ででた行き場のない土が今も庭に埋まっている事、それは、私たちにとって、汚染土ではなく、先祖から受け継いだ生成する力のある土であること。敗者の歴史、災厄を乗り越え生き抜いてきた先祖たちの残したものを受け継いでいく。奥会津の水、山、木々は、震災後言葉を失った私の対話の相手になっていて、そこには先達の面影があったことを話す。

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福島の思いのしずくを受け止める真剣なまなざし。



◆16:40 第三部 「ふくしまへの返し歌」


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第一部、第二部を受けて、参加された皆様から寄せられた「ふくしまへおくる言葉」をメンバーから紹介。

   ● 子どもの頃の10年間を東北で過ごした。
     だから私のしずくの何分の1かは、東北でできている。
     必ず身体の中にふくしまのしずくを持っている。
     その滴りの音に耳を澄ますこと。

     東京の小さな1滴を集めて
     ふくしまの哀しみの大地をわずかでも
     うるおし、新たな芽ぶきにつながれば

   ● 原発の被災地「フクシマ」というステレオタイプで見方を固めてしまわ
     ないよう、やわらかく、ふくしまを応援していきたいです。

   ● 除染のための黒いビニールに包まれた「行き場のない土」は、いま場を
     奪われた土は、ふくしまで失った何か、私たちがとっくに喪ってしまって
     (うばわれて)いた何かのことを問うているようにも思えてきました。

   ● 「ふくしま」を語ることを恐れてはいけない、忘れてはいけない!
     時も場所も記憶も「日本」も見つづけ、共に往還しつづけることなのですね。

   ● 海やまのあいだにいるわれわれは、ひとしくジプシーなのですね
      土を愛し、僕も、誰にでもできる口笛を吹こう
      下手クソでもいいから口笛を吹こう
      風をメロディーにかえることは、木々や水たちに習うのがいい。
      それをふくしまが教えてくれている。
      われわれは忘れない。
      3.11を忘れないのではない。
      3.11をおもいだすことを忘れない。

全てのメッセージが、心打たれるものでした。ありがとうございました。

【 再生へ祈りを込めたメッセージ】

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代表 田母神顯二郎から再生への祈りが語られた。「我々は一滴のしずくである。編集は一滴のしずくから始める。一滴のしずくのなかに、全てのものがある」と松岡校長の言葉を紹介。全ての歴史、全ての物語、発見すべきすべての関係性が、一滴のしずくにあるといえる。この1年、プロジェクトメンバーと東北、福島を語り合い、ふるさとや原郷を探す旅を続けた。これも私たちにとっての一滴のしずくである。その中で、喪失と再生は繋がっているのではないか、私たちが見てこなかったものに、失われつつある人間の原郷があるのではないかと考えた。
ベルクソンの言葉から、
「記憶は、物理的な空間を持たない、記憶には経験したことはもちろん、経験しないないことも含め、すべてのことが入っている。そうしたすべてのことは、記憶の中で、同時に隔てなく共存している。」
物理的な距離、時間の経過を分けることをせず、同時にモノゴトを見ると分け隔てない世界に通じることが出来る。喪失と負のしずくに満ちている福島の再生のためには、理屈ではなくいろんなことをやる必要があるが、この一滴を大切にしていきたい。と、切実を引き受けた思いが語られた。


【松岡校長からメッセージ】
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自分の中の内風景を一新する時がある。内なる3月11日を誰でも持っている。父親が亡くなり、いろんな本を読んでも、書いていても間に合わない、その時に行ったのが奥会津。そこは、時の流れが、山、水、とともにあり、自分の中の最も高速なものを走らせないと滔々たるものに対応できない。滔々とするからゆっくりすればいいのではなく、一か月に渡り、緩やかな流れの中で、高層意識を持つか、ということだった。
奥会津を選んだのは、陸奥がアウトオブスペースだったからです。日本の古代の国家は、大和朝廷で、大和という境界を作る。白河の関から北を陸奥となる。なぜ福島は、日本を分断した地にいたのか、そういう場所にいたのか。

私たちは、百年一滴の境界線を、沢山持つが忘れている。京都には境界のタブーがあった。潜んでいた境界を越えなければならないとも思い、奥会津に向かわせた。それが最も尊いものに向かっていった。

創は、絆創膏の創である。記憶を刀で潰していく、これが創であって、クリエイティブである。
今は、百年一滴が見えている。自分の中の百年一滴、日本の中の百年一滴、普段見えなかったものを見ていく。と語りかけてくれた。


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松岡校長から「うつくしい一刻だった」と言葉をいただきました。

参加されたみなさま、出演くださったみなさま、編工研のみなさま、
思いを寄せてくださったみなさま、本当にありがとうございました。


本楼は、切なく香ばしい泣きたくなるほど美しい空間になりました。

みなさまに感謝いたします。ありがとうございました。


レポート 鈴木康代

【2013年12月21日】「宮沢賢治と<再生>のものがたり」郡山開催レポート

◆ 福島会場 「宮沢賢治と<再生>のものがたり」開催レポート ◆


■ 2013年12月21日(土)、福島県郡山市で開催した
 「宮沢賢治と<再生>のものがたり」の模様をお送りします。


「“こころの再生”を通して福島と日本を再生することができたら」
この願いから私たちの活動は始まりました。
この活動を通して、国外も含め、福島と他地域の人たちの新たなネットワークを
作っていきたいと思っています。
こちらの開催趣旨もご覧ください。
「宮沢賢治と再生の物語」開催のご案内

今回は、東京公演からあまり間がありませんでしたが、
「東京と福島がメッセージでつながる」、「心と心がつながりあう」という趣旨に
多くの方々の賛同を得て、福島のみなさんからは「県外でも福島を考えてくれる人
がいる」「福島は、忘れ去られていない」と声をいただきました。

富岡町の仮設住宅にあるコミュニティFM、「おたがいさまFM」では、何度も
イベントをラジオで放送くださいまいた。郡山市のFMココラジでは、ご厚意に
よりラジオ出演し、直接イベントを紹介しました。地元紙の福島民友、福島民報
でも、開催案内の掲載をして、多くの方々に知っていただく機会となりました。
みなさまのご厚意に感謝しております。

当日の会場は「創空間 富や蔵」です。
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明治30年に建てられた酒造りの蔵。震災の影響で、2013年4月に再オープンしました。


開場前にもかかわらず、「楽しみにしてました」と、早めに会場に入るみなさん。
いわき市、会津若松市、福島市、白河市、富岡町、大熊町など、県内全域から
参加されました。
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中は、優しい木と白壁で、温もりある空間です。蔵の歴史と趣に包まれて、
参加者と出演者の思いの結晶が満ち溢れているような雰囲気でした。


当日は、私(鈴木)の友人知人もボランティアで会場運営を手伝ってくれました。
日頃の張りつめた日常から少しでも解放された時間になるように、会場には、
お茶やお菓子、花などを設え、心尽くしの用意で、参加される方を迎えました。
各地からお土産も届き、美味しいものが並びました。

◆ 14:00開演

○最初は、「ふくしま再生プロジェクトの会」のメンバーより、
会場のみなさまへ感謝の気持ちを申し上げました。
そして、ご支援いただいた方々にも御礼を申し上げました。
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メンバーを代表して、田母神から、会の設立の経緯や公演の趣旨、
そして「心のふるさと」福島への思いが伝えられると、
みなさん頷きながら聴いていらっしゃいました。

<おつきゆきえさんによる「宮沢賢治朗読」>

おつきさんは、「福島が大好きです」と開口一番に話しました。
「お客さんがみなさんあたたかい。福島は本当にいいところです。
宮沢賢治さんを読むと、どんなにつらくとも、生きようと思えます。
私たちは、生きるのです。そう賢治さんの作品は話しかけてくれます。」
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演目は、「ドングリと山猫」、「いちょうの実」と「虔十公園林」でした。

おつきゆきえさんの朗読が始まると、一人、また一人と、ハンカチで目を拭う
姿が見られました。おつきさんの東北弁の賢治語りは、福島で暮らす人たちの
知らず知らずのうちに我慢してきたものから、解き放たれる時間を作り出して
いました。今ここが泣ける場所であることを知ると、会場のみなさんは、堰を
切ったように泣いていました。
  
朗読が終わると、おつきさんは、「私がみなさんに励まされました」と会場へ
声をかけました。
帰りの時も「今日の会場はとってもあったかかった」と何度も話していました。

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「今日は、わざわざ来てくれありがとうございました。感動しました。」と、
お礼の言葉と花束がおつきさんへ贈られました。
 
<アンヌ=エリザベット.アルペルンさんの演奏>

フランスから見えたアルペルンさんでしたが、
この日は、福島のみなさんへ日本語であいさつをしたいと、
前から日本語の練習をしていました。
 
「ふくしまのみなさん、今日はここで会えてとてもうれしいです。
心を込めて演奏しますので、最後まで、聴いてください」
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レクイエムとエレジーを演奏。
澄んだギターの音色と清らかな歌声は、天上にも響き渡るようでした。そして、
3.11を経験した私たちの心の氷を、優しくあたたかく春先の日差しのように溶か
してくれました。会場は、優しさに包まれ、みなさん涙がとまらずに聴いていま
した。震災で、離れ離れになってしまった人への思いを馳せている方もいました。

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アルペルンさんの通訳をしてくれた高瀬智子さんも、三線で沖縄民謡を披露。
福島に南国の風を吹き込んでくれました。清々しい声の響きでした。

 

<東京からのメッセージ紹介>

ふくしまのみなさんへ、東京からのメッセージ集をお渡しすると共に、
会場でも、米山さんと鈴木で読み上げました。
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みなさんは、メッセージを直接聞くことで、「福島が他の地域とつながっている」、
「福島のことを考えている人がこんなに多くいる」と、他者の存在のありがたさに
感じ入っていました。  

福島会場でも、参加していただいた方にメッセージをいただきました。
その一部をご紹介します。

・最初から最後まで涙が流れて止まりませんでした。
 私の家は、福島原発から40キロ地点、
 あの時の恐怖を外に出すことができずに、
 この3年近く、いたのかもしれません。
 泣かせていただいてありがとうございました。

・乾いて硬くなった土に腐葉土と水を混ぜ込むと土はフカフカにやわらかく、
 みずみずしく生まれ変わります。
 新しい何かを芽ぶいて力を得た大地になります。
 自分の心が今日は腐葉土と水を得たようにやわらかくて変化してゆくことを感じました。
 自分でも驚きですが、その変化が。元気をいただきました。
 ありがとうございました。

・今日はとってもとってもありがとうございました。
 我が家は除染がこれからです。
 3.11から重い荷物をいただいて、何かこれからどうなるのか、
 不安感がたくさんあります、が、その中で、
 少しでも前に笑顔で進んでいきたいと思います。
 ありがとうございます。

・なんとなく気になっていた「とみや」でもらったチラシでしたが、気にとめて
 おいてよかったです。賢治の短編は全編読んでいましたが、おつきさんの朗読
 を聴き、彼女の感想を通してまた別な感想をもち、また読み直してみようと思
 いました。アルペルンさんのギターと歌の調べに<復活>のエネルギーをもら
 ってまた別な活き方(生き方とは別に)に力づけられました。

公演終了後に、お見送りをしていると、

 「新聞でみて、予約なしで来たんですが、すっごく良かったです。泣きました」
 「私は、津波で5人亡くしています。今日は魂に触れた気がしました。ありがとうございました」

と声をかけてくださいました。

今回のイベントが、少しでも福島の皆さんの心に響いたことをとてもうれしく思うと
同時に、開催まで、多大なるご協力とご支援をいただいたみなさまに感謝の気持ちで
いっぱいになりました。

ご参加いただきましたみなさま、ご協力ご支援いただいたみなさまに、
感謝の意を申し上げます。ありがとうございました。


この日の模様は、後日福島民報にも掲載されました。


【2013年11月30日】「宮沢賢治と<再生>のものがたり」開催レポート


◆「宮沢賢治と<再生>のものがたり」開催レポート ◆

◆2013年11月30日(土)、明治大学(和泉キャンパス)にて開催した
 「宮沢賢治と<再生>のものがたり」の模様をお送りします。

 3.11から2年半が経ち、次第に震災の記憶が薄れようとしています。
 実際に、東北に住んでいる人たちの間でも、どんどん「取り残されていく」、
「忘れ去られようとしている」という声が聞こえてきていました。
 この会の企画したきっかけは、東北や3.11についてみんなで考える会を
持ち、東北の支援につなげていきたい、という思いからでした。


今回の構成は、

第一部「ふくしまの今を語る」
第二部「アンヌ=エリザベット・アルペルンさんによる鎮魂歌」
第三部「おつきゆきえさんの宮沢賢治の朗読」

という三部構成。

このイベントを告知してから、「東日本大震災や東北のことを考えたかった」と
いう多くの反響をいただき、当日は、東京都内からだけでなく、山梨、名古屋、
神戸からと遠方からも参加してくれました。

当日は、会場準備から始まり、プログラムに加筆しながら、直前までリハーサル。
会場内には、福島を感じてほしいという趣旨で、福島の現状をまとめた復興記録
の資料が並び、受付には、福島銘菓「ゆべし」も用意しました。


それでは、「宮沢賢治と再生のものがたり」イベントの様子を
当日のプログラムにそってレポートしていきます。


<14:00開演>

○最初は、発起人である米山拓矢さんが、開催へ至る思いを語りました。
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「来春、東日本大震災から3年を迎えようとしている中で、東京オリンピック
 が決まり、世の中では、震災や東北のことを忘れがちになってきています。
 その中、何か自分にできることはないだろうかと思い、今日ここに3.11に
 ついて思いを共有する場を設けることができて、うれしく思います。
 今回は、東京から東北の福島へ、メッセージを送り、物語を届ける支援を
 したいと思っています。」


【第一部】ふくしまの今を語る
 
○福島県にゆかりのある田母神顯二郎さんから、来場者のみなさまへ感謝の意を
 述べるとともに、日本人の原郷としての東北、福島のへの思いが語られました。

「3.11から2年と8か月あまりが経とうとしています。あの一連の出来事は、
 言葉に表しようがない、まさに沈黙するしかない、そういう本質を持った事件
 でした。何かしたいともいながらも、何もできなかった「情けなさ」と実感し
 てきた年月でもありました。ただ、こうした無力感や沈黙の中でも、自分自身
 のことを含めて、いろんなことを変えていかなければならない、という気持ち
 は常に持っていました。
 今日は、<ほんとうの再生>ということに向かっていくための、このような会
 をみなさんと一緒に開けたことを本当にうれしく思っています。」


○次に、田母神さんからのインタビューを受けながら、福島に住み、震災後、仮設
 住宅訪問などの活動をしてきた鈴木が、福島の今を話しました。
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「避難された方と話すと、まず最初に、原発事故後に避難した様子を語り始めます。
 町でサイレンが鳴り、すぐ帰れるだろうと思って車で避難したけど、二度と帰れな
 かったといいます。それから、避難所での生活、転々とした日々も話します。
 私自身、震災後は、言葉が空っぽになってしまいました。目の前の状況を説明する
 言葉がなくなりました。福島には、今も、行き場のない瓦礫があります。言葉も
 瓦礫になってしまいました。まだ言葉にならない感情が、私たちの内にたくさん
 あります。福島の土も今除染されています。私たちは、それを排除するのではく、
 いいことも、悪いことも、全部引き受けて生きてきた土地なのだろうと思います。」

 会場のみなさんは、真剣に、福島の現状の話に耳を傾けてくださいました。


【第二部】Anne-Elisabeth Halpern  アンヌ=エリザベット.アルペルンさんの歌とギター

 ランス大学でフランス詩を教え、パリの国立音楽院(コンセルヴァトワール)を出た
 音楽家のアルペルンさん。今回の趣旨に賛同し、東北、福島のために歌を捧げたいと
 のことで、当日は、澄み切った歌声で、まさに東北の人だけでなく、私たちに響きわ
 たる歌を演奏してくれました。
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 前半は、永遠に旅立たれた方々に捧げるエレジー。
 後半は、残された私たち、今を生きている方々を励ます曲を演奏されました。
 最後に演奏された曲は、Raymond Jean-Marie 「Kizuna」、この曲は、
 レーモンが、東日本大震災へのレクイエムとして私たち日本人へ、友情の
 証として捧げられた曲でした。
 国境も空間も越えて、人間の根本に響く演奏でした。

 通訳の高瀬智子さんが、アルペルンさんの詞の意味を会場に伝えてくださいました。


【第三部】 おつきゆきえさんによる宮沢賢治の朗読

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 (写真は、朗読後花束をもらったおつきゆきえさんです)

 山形出身のおつきゆきえさん、幼少期しか住んでいないというが、東北弁の
 独特の濁点のあるアクセントや節回しは、まるで東北にいるような感覚にな
 りました。
  
 朗読の合間には、おつきゆきえさんの宮沢賢治に対する強い思いを語ります。
 「生きることの意味を見つからないという人がいるが、私たちは何があって
 もいきていかなばならない」と、会場の全員に語りかけました。


○最後には、出演者、それぞれから本日の御礼と福島への思いが語られました。

 「12月21日には、福島県郡山市でみなさんの思いをしっかり伝えます」


○東京と福島をつなぐものとして、参加した方々から「福島へのメッセージ」をいただきました。
 今日感じたこと、福島への思いなどを、会の終了後に、みなさん熱心に書いてくれました。

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いただいたメッセージの一部をご紹介します。

・東京で何もできないかのような歯がゆさを感じながらも
 少なくとも忘れない、ということだけは自分に課したいと思っています。

・とても素晴らしい会をありがとうございました。
 音楽と言葉の力を強く感じました。
 涙が止まらなかったです。

・言葉にならないでガレキのように置き去りになっていることたち、
 そこでしかつながらない部分も確かにあって、
 今日の哀歌や鮮烈な語り、このイベントそのものが魂の中にある
 ガレキのここと向こうをつなげてくれているような気がしました。
 郡山にも行ってみたい、と思いました。

 
・何も問題が解決しないまま、時間だけが過ぎてゆき、
 私自身も何もできずに、もどかしく思っています。
 けれども、東北のことはいつも考えています。
 今日の会では、亡くなった方々に思いをはせるだけでなく、
 本当の意味での「再生」が、音楽と詩(文学作品)を通して
 共有できたと思います。
 無力ではありますが、いつでも心は思っています。

・何かしたいと思ってもなかなか何もできなくて…
 今日のこういう会に参加できて良かったです。
 東北の、福島の人たちに私たちの負を背負って頂いていると実感しました。
 何かできるかわからないのですが、何かできることがあればと思います。


○今まで言葉にしなかったことをあえて言葉にしてみると、みえてくることがあります。
 東日本大震災は、被災地だけでなく、被災地以外の皆さんにも心の傷となって刻まれ
 ていることがよく分かります。
 福島と福島以外、被災地と被災地以外、そんな境界線はないことがみえてきます。
 多くの境界が生まれつつありますが、それをこえて活動していきたいと私たちも思い
 を新たにいたしました。


○この後、出演者と参加者のみなさんで、懇親会へ移りました。

 その場では、次のような感想がありました。
 ・「東北を考えたいと思っていたけど、なかなか機会がなかった。この場が
   あって良かった」
 ・「まずは、住んでいる人の話を聞くことが、復興の第一歩なのかもしれない」
 ・「自分の無力感ばかり多かったけど、考えることから始めたい」 
 など、遅くまで東北、福島のことを語り続けました。


ご参加いただいたみなさま、ご協力ご支援いただいたみなさま、
本当にありがとうございました。 




プロフィール

事務局 

Author:事務局 
代表 田母神顯二郎
(明治大学文学部教授)

活動内容 (2013年~)
・「仮設住宅訪問活動(チャリティコンサート開催)」(富岡町、大熊町、浪江町など)
・「福島考え巡る1日企画実施(震災語り部と被災地ツアー)」
・「東京と福島を繋ぐ復興イベント開催」(明治大学、豪徳寺開催)
・「福島新発見(福島の知宝の掘り起し)」など

メンバー 8名
事務局 鈴木
所在地 福島県県郡山市

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