fc2ブログ

【ふくしまを歩く】 前沢曲屋集落 ~南会津町 舘岩地区 ~

郡山市から、天栄村を抜けて下郷町、そして田島町を通り、車で2時間30分。
国道352号に入り、川沿いを走っていくと、道路沿いに木の工房がいくつかある。

軒下に山積みの薪が並び、木と共に生活している様子がうかがえる。
この先に、前沢曲屋集落がある。今もここには人々暮らしている。

IMG_0584.jpg

前沢集落に入ると、水車と杵のバッタンという音と馬頭観音、馬力神が
出迎えてくれる。

IMG_0586.jpg

前沢曲家集落は、文禄年間(1592年~1595年)に、只見川流域を拝領した
横田城主の家臣が、移り住んだとされるのは始まり。
「中世に会津武士が拓いた集落」として言い伝えられている。

曲屋というのは、L字に曲がった住まいのこと。突出した部分は、当時、農耕や
運搬に欠かせない大切な馬や牛がいたところ。その奥が人間の住まいになって
いる。同じ屋根の下に、人間と同じように馬や牛が暮らしていた。
人と馬との共存するところで、信頼関係すら感じられる。

IMG_0579.jpg


突風で倒れたという集落の守り神だった樹齢800年の大杉の後を見ていると、
集落に住む男性が声をかけてくれた。

「時間あるなら映像があるけど見るかい。自由にあがっせ」

そう言うと、また農作業に戻っていった。

この地は、豪雪地帯、外圧厳しい環境の集落の暮らしがあった。
冬は雪に囲まれる。薪は、暖を与え、湯をもたらす。
木こりを生業にする高齢の男性が、こう語っていた。

「斧で木を切り倒して、自分たちは木の命をもらう。
 木がないと自分たちが生きれないんだ。」
 
この地では、トチ餅を食べる。祭りのお供え物としても作る。
縄文時代から食されていたという栃の実。
食するまでには手間がかかるが、この実のあく抜きには、木灰を用いる。
木は、燃え尽きてもなお新たな食を生み出してくれる。

雪に囲まれた里山、ここには生死の境界が近くに感じる分、
日々の丁寧な暮らしがある。

集落のある曲屋には、人々が受け継いできた農具が並んでいた。
文字の記録ではなく、農具が人々の生活を記憶していた。

帰り際、農作業の手を止めた男性から、

「ここのだから、持っていきっせ」

と水をいただいた。
これ以上の説明もない。
寡黙さが優しさを一層引き出していた。


<前沢集落>
プロフィール

事務局 

Author:事務局 
代表 田母神顯二郎
(明治大学文学部教授)

活動内容 (2013年~)
・「仮設住宅訪問活動(チャリティコンサート開催)」(富岡町、大熊町、浪江町など)
・「福島考え巡る1日企画実施(震災語り部と被災地ツアー)」
・「東京と福島を繋ぐ復興イベント開催」(明治大学、豪徳寺開催)
・「福島新発見(福島の知宝の掘り起し)」など

メンバー 8名
事務局 鈴木
所在地 福島県県郡山市

最新記事
カテゴリ
月別アーカイブ
検索フォーム
リンク
QRコード
QR